【セミナーレポート】スタートアップCFOとPEファンド投資先CFOが語る活躍のポイント - キャリアインキュベーション | ハイクラス・エグゼクティブの転職・求人情報

【セミナーレポート】スタートアップCFOとPEファンド投資先CFOが語る活躍のポイント

2022.11.16

今年6月に実施された、「スタートアップCFOとPEファンド投資先CFOが語る活躍のポイント」をテーマに、PE投資先のCFOとしてご活躍の山岡正周氏、ベンチャーのCFOとしてご活躍の山田聡氏をゲストに迎えて、弊社マネージング ディレクター中川 英高のモデレートのもとセミナーを実施しました。

参加者からは、「CFOの役割に対する解像度が高まりました。」「マインド部分やCFOとしての立ち振る舞い方が参考になりました。」等のお声を頂いております。大変参考になる内容ですので、今後のキャリア構築の参考にしてください。

[1]会社紹介と自己紹介をお願いします。

山岡 私は今年の1月に、キャリアINQさんの紹介でファンド投資先のCFOに着任しました。前職で別のPEファンド投資先に管理部の責任者として勤めており、ファンド側ではなく会社側の人間として、ファンド投資のスタートからイグジットまで一通り経験し、その経験をもって、今回、キャリアINQさんにファンド投資先を紹介してもらいました。現在はCFOとして働いており、責任が重大で、ここ半年ほど奮闘しています。

山田 私は新卒で三菱商事に入社し、その後、アメリカにMBAを取りに2年間留学をしました。前職はカーライル・グループというプライベートエクイティーファンドで、国内の企業向けの投資を担当していました。その後の2020年に現在の株式会社10XにCFOとして参画しました。

株式会社10Xは、従業員が80人ほどのスタートアップです。我々は日本を中心にネットスーパーが普及するように、大手のスーパーマーケットやドラッグストア、具体的にはイトーヨーカドーやライフ、スギ薬局等の裏側に入り、彼らがネットスーパーを作るために必要なシステムやそれ以外の機能を一気通貫で提供する事業を行っています。本日はよろしくお願いします。

[2]現在までのキャリアについて教えてください。

山岡 私は、大学卒業時は親族が経営する会社に入社しました。入社時から経理やバックオフィスを担当したのですが、中小企業という事もあり、資金繰りが厳しく、銀行との交渉も経験する過程で経理や財務の知識の必要性を痛感しました。将来的に銀行としっかり交渉でき、資金を調達できるような、スペシャリストを目指さなければ将来は困ると思い、公認会計士を目指しました。

一念発起し、会社を退職し資格取得に打ち込み無事合格し、大手監査法人に就職しました。そこではIPO支援を中心として数社の監査を担当しました。監査はいろいろな会社を比較できて、勉強になることも多かったのですが、他人が作成した財務諸表をチェックするなど、あら探し的な側面がありました。私は自分で動き、自分で意思決定をすることのほうが好きでしたので、7年ほど働いてから、事業会社に転職しました。

事業会社は現在の会社が4社目です。最初は東証1部上場会社の大企業で、1兆円企業の会社に就職しました。そこで会計税務全般の業務をしていました。しかし、1兆円企業でしたので、なかなか会社の全体像が見えず、管理職にはなったものの、責任者になるまでに何年かかるか分からず、5年ほど開示などを含めて勉強して、次は上場マザーズの会社へ転職しました。当時、マザーズから東証1部に市場変更を目指していましたので、東証1部への鞍替えを通常業務と並行しながら進めていました。経理の責任者として、ある程度の裁量を持ち、財務諸表の作成から開示、税務申告書の作成まで自由に仕事をさせてもらいました。最終的に東証一部の承認寸前まで辿りつくことができましたが、会社都合で私の在籍中に東証1部鞍替えは達成できませんでした。私の中では一区切りついたこともあり、上場準備会社に移りました。そこは上場準備の会社であり、管理業務の責任者として仕事をしていましたが、PEファンドに買収され、思いがけずにPEファンドと仕事をすることになりました。3年かけて投資金額の数倍の金額でイグジットでき、ファンドとWin-Winの関係を築けました。その後、ファンドの投資先のCFOに転職をし、今に至ります。

キャリアINQ 大企業から中小企業、監査法人まで、ファンドの投資先も含め、非常に幅広い経験をしたことが理解できました。山岡さんは新卒から経理財務、そして、監査法人というキャリアでしたが、学生時代からCFOというキャリアパスをイメージしていましたか。どの辺りからCFOというキャリアを意識したか、CFOを目指すきっかけ等があれば教えてください。

山岡 大学卒業時には、世間的にもCFOという職種になじみがなかったこともあり、それを目標として仕事をしてきたわけではありませんでした。監査法人ではどれほど税務を極めるか、会計を極めるかに重点を置いて経験を積み、監査も含めて一通り学びましたが、会計経理の専門家になったからといって、経営ができるのかと疑問に思い、自分が目指しているのはそこではないと思うに至りました。経営する側に回ろうと思ったのは、大学卒業後から考えていました。父がもともと経営者だったことが大きな要因だと思います。

キャリアINQ 山田さんにもお話を聞きます。山田さんは新卒で商社に入社し、その後、PEファンドというキャリアですが、商社とPEファンドでそれぞれ、どのような業務をしていましたか。

山田 商社在籍時は自動車部におり、日本メーカーが製造する自動車の、輸出業務から始まり、現地での販売を促進していくための、販路構築やマーケティング支援などをしていました。当時は現地側の販売会社がありましたので、そこをM&Aし、経営を改善するためのPMIのために現地に乗り込んでいくことも経験しました。M&AやPMIは商社の現場で経験していたこともあり、結果、PEファンドのキャリアも比較的、連続性のあるキャリアでした。

PEファンドへ転職後も商社と同じように、投資のソーシングから、投資するためのデューデリジェンスを担当しました。投資後の半年は、180日プランといって、現地に足を運び、経営陣と一緒に企業変革プロセスをハンズオンで支援する仕事をしていました。

キャリアINQ 商社とPEファンドの、それぞれの転職背景も聞かせてください。また、現在はCFOですが、CFOのキャリアはどこで意識されましたか。

山田 商社在籍時にアメリカにMBAを取りに行きました。MBA取得のきっかけは、商社時代、当時の事業投資先で出会ったプロ経営者との出会いです。投資先のジョイントベンチャーのパートナーがイギリス人のプロフェッショナル経営者を雇っていて、その人たちと接点を持つ中で、日本人の大企業からの出向経営者と、イギリスから派遣されているプロフェッショナル経営者では経営に対するスタンスや、意思決定におけるリスクの取り方などの違いを感じました。本当に企業価値を上げられる経営者はリスクをとって大胆な意思決定をし、自らの仮説を持って経営インパクトを起こせる大きな変化点を作ろうとしていることが印象的でした。

本質的に企業価値の向上に貢献しようと思ったら、そのような欧米的なプロフェッショナル経営者としてのスキルを得ることが必要だと思い、アメリカへのMBA留学を決意しました。そして、アメリカで2年間を過ごす中で、MBAで身につけた知識をより実践で生かし、自分の血肉としていく機会を得たいと考えたときに、PEファンドであれば、山岡さんのようなプロフェッショナルな経営者と一緒に仕事をする機会が多く、かつ、同時に複数の投資先を見られるので、プロフェッショナル経営者の多様なマネジメントスタイルの引き出しを見られます。それが私には魅力的に映りました。そういった形で、さまざまな経営スタイルを身に付けたいと思ったことがPEファンドに移った経緯です。

その後、2年半ほどいろいろな会社の経営支援を経験し、自分の中で少しずつ経営者像が見えてきましたので、そろそろ自分でドライバーズシートに座り、実践をしたくなりました。なぜCFOかというと、今までの自分の経験から、ファイナンスという切り口が経営者として貢献する切り口としての価値が高いと思ったためです。

キャリアINQ 初めからCFOになろうと思ってキャリアをつくっていったというよりも、よりプロフェッショナル経営者として力を付けようとしたときに、まず自分の価値を発揮できることがファイナンスだからCFOになったという順番ですか。

山田 まさにそうです。

[3]今の会社で今のポジションを選んだ背景を教えてください。

山岡 私の前職はPEファンドの投資先でしたが、その当時は会社側の管理部の責任者で、会社を良くして、企業価値を上げることをメインで行っていました。当時はファンド側ではなかったので、いきなりファンドの人が来たときに、もう少し上手なアプローチがあるのではないか、どのような形で間に入って調整するかなど、自分なりにその役割を行っていましたが、ファンド側に立ったら、もっとうまく立ち回れるのではないかと考えていました。そこで次はファンド側として仕事をしたいと思い、転職をしました。

逆に今はファンド側の人間として、投資先の会社のCFOとして仕事をしていますが、やはり抵抗はあります。先ほど山田さんの話で、70人の従業員全員と話したと言っていましたが、それはいいと思いました。そういったことをしないまま、入ったこともあり、最初はコミュニケーションが不十分でした。そこは準備を万全にして、最初に従業員と話す機会を設けたほうが良かったかもしれないと、山田さんの話を聞いて思いました。

前職でイグジットを経験して、次はファンド側の人間として、上手に調整をしたいという思いから転職しました。以上です。

キャリアINQ 現職はファンド側の立場で会社に入りますが、大きな変化はありましたか。

山岡 ありました。現在の投資先はオーナー経営者が立ち上げて、短期間で急成長を遂げた会社です。その後オーナーはExitで退任し、ファンド・トゥ・ファンドで私が来ていますが、一度、ファンドのイグジットを行っているので、会社側もそれなりにファンドがどのようなものかは理解しています。しかし、先ほどの山田さんの話にもあったように、ファンド側として、会社の背景だけではなく歴史も含めて、深く理解した上で行くと、もっと会社に入り込めたかもしれないと思います。会社側の人間として入るのと、ファンド側の人間として入るのとでは、会社の人の見る目は違うことを改めて理解しました。

キャリアINQ 転職を考えている候補者の中には、PEファンドの投資先は基本的にファンドが株式の大部分を保有するので、どうしても裁量権が限定的なイメージがあると思います。山岡さんは転職の際に、その点を気にしましたか。また、実際に中に入り、そういったことを感じたことはありますか。

山岡 それはとても感じます。前の会社のときは、当初のPEファンドは割と任せてくれました。ハンズオンで取り組むファンドではなく、利益さえ予算どおりに上げれば、自主性を重んじてくれました。改革に関しても、あまり資金をかけなければウエルカムというスタンスで、非常に仕事をしやすかったです。

一方で、前職でExit後のファンドはハンズオンスタイルで、自分たちの進め方に自信を持っているので、自分たちの方法で押し進めようとしました。それで実績を上げているファンドでしたので、それはそれで、どちらがいいということはありませんし、ファンドは投資家から貴重なお金を預かっていますので、投資効率を上げるために自分たちが最善と考える方法で進めるのがあるべき姿だと思います。転職をする上ではどこまで裁量を任せてくれるファンドかという見極めは大事だと思います。

キャリアINQ 現在の会社とポジションを選んだ背景を教えてください。

山田 私は前職時代に比較的、コンシューマー系のプロダクトを扱う会社の投資に関わらせて頂く機会が多かったです。そこで気がついたこととして、ファンドがバリューアップで取る手法は、そのリスクリターンに対する感度の性質上、セールスの強化やマーケティングにしてもテレビCMのような確立されてきた確度の高い手法を選ぶ傾向が強いと感じました。逆にECやデジタル・SNS広告といった、新しいテクノロジーやデジタルの領域を活用したバリューアップ手法は、まだそこまで確立されたものが多くないこともあり、積極的には活用されておらず、社内にもノウハウを持った人が多くない状況でした。

その中で今後は、「Every industry is a tech industry」とも言われるように、いろいろな企業がテクノロジーやEC、オンラインの力を使い、バリューアップをしなければならなくなると思っており、私自身の今後の20年や30年のキャリアを考えたときに、確立されたnon-techのバリューアップ手法だけでは逃げ切れないと思い、逆にテクノロジーやデジタルの力を使った、新しい形のバリューアップやトップライングロースをつくることができれば、それをPEファンドでの経験と掛け合わせることで、ユニークなキャリア価値を生み出せると考えました。そこで、それらに携われるテクノロジーに力を入れているスタートアップを中心に探しました。

転職先探しには2カ月ほど時間をかけました。まさに投資先を選定するのと同じような気持ちからデューデリジェンスという視点で、社長と毎週のように朝にお茶を飲み、事業のディスカッションなどをして、お互いの経営スタイルが合うかも含め、さまざまな確認をした上で意思決定をしました。

キャリアINQ 先ほどプロフェッショナル経営者というフレーズが出てきました。一般的にイメージするプロフェッショナル経営者はファンドの投資先や再生フェーズの会社に行くイメージがありますが、そこでスタートアップに行き着いた理由は、他の方とは違う強みを身に付けるという目的が大きかったのですか。

山田 経営イズ経営のようなところもあり、スタートアップであろうがマチュアな企業であろうが、組織をつくったり、カルチャーをつくったりすることの重要性が高い、という意味では大きく変わらないと思います。とはいえ、成長フェーズにある会社のほうが、固いコスト管理をするよりは、よりグロースに向けて積極的な手を打っていくという意味での、手数の多さが求められ、求められるスキルセットが変わってきます。会社の置かれたフェーズやインダストリーなどの違いによって、経営者として得られるスキルが違うか否かはそれほど意識していませんでしたし、私もいろいろなスタートアップの方と話す中で、マチュアな企業で経営を見てきた経験が、逆算的な貢献価値として求められていると感じました。

他方で重視したポイントとしては、プロフェッショナル経営者として現場経験があるわけでもない私が、最速で経営者としての現場経験をできる環境はどこかと考えたときに、アーリーフェーズのスタートアップは自分に任せてもらえる範囲も広いと思いました。逆にマチュアな企業に行くと、私のキャリアではCFOの手前の経営企画部長が入り口になる可能性も高く、そこで結果を出すことでCFOに昇格していくというように、一定程度時間がかかる感覚もありました。それで、特に経営上の重要な意思決定の場数を経験することが自身の経営者としての成長に最短で繋がるのではという仮説から、時間を買うという意味も含めて、アーリーフェーズにあるスタートアップを選びました。

キャリアINQ スタートアップに行くネックとして、事業がうまくいかないリスクが高いのではないか、年収が出ないのではないかというイメージを持っている方もいますが、山田さんは転職活動のときにその辺りは気にしていましたか。また、実態はどうでしたか。

山田 一定、気にしました。当時、自分自身が思っていたことと、飛び込んでみても変わらず感じていることとしては、当然会社は生き物なのでうまくいかないリスクはゼロにはなりませんし、スタートアップはより会社としての未来の不確実性が高いと思います。ただ、それと自分自身のキャリアがどうなるかは切り離して考えたほうがいいでしょう。適切にVCなどからしっかりと資金を調達しているスタートアップは、株主から相応の期待値がある故に投資を受けているわけです。そのような会社であれば、ある産業や領域において、大きく意味のある重要なチャレンジをしようとしている会社であるケースがほとんどと思います。その会社の中で適切に自分自身努力し、会社としての重要なチャレンジに対して一定の貢献をしていくという経験ができていれば、もしもマクロ要因や競合要因でその会社がうまくいかなかったとしても、結果としてキャリア上のその後の選択肢が増えると感じています。これは採用活動などを通して周囲の会社の方を見ていても明確にそのように感じます。

繰り返しになりますが、個人として、どのような経験やチャレンジができるかという視点で見て、少なくとも2年や3年は腰を据えてチャレンジができる環境であれば、結果として会社がうまくいったとしても、いかなかったとしても、キャリアとは切り離して考えられる話だと思います。そのような意味で、私自身も、自分が良いチャレンジができる会社を選んだので、事業や会社が何らかの事由でうまくいかない可能性をリスクとは感じませんでした。

年収については、CFOとして入るからには自分のキャッシュフローと会社のキャッシュフローの両方を考えて、最適な提案をできるかどうかを求められていると思います。具体的に言うと、「現在の会社の現金残高やランウェイなら自分&そのほかの経営陣に払うべき給料の水準はこの程度だと考えます。スタートアップはマイルストーンをクリアすると大きく資金調達ができるので、マイルストーンをクリアして、大きな資金調達ができたら、自分含めた経営陣や従業員に払われるべき給料の水準をここまで上げた方が良いと考えます。」といった提案です。つまり、自分含めた経営陣・社員の市場価値や貢献価値と、会社のキャッシュフローリスクの両方を束にして、プランを組み、しかもここまでミートできる自信があるので、最初の1年は給料が低いかもしれませんが、会社の業績がヒットすれば、水準が上がり、自分がイメージする水準に到達できるところまでプランニングします。

このように私のケースも、自分自身が考えるインセンティブプランと会社としてのキャッシュフローを先に社長に相談してから入ったので、給料は下がりましたが、ある程度、自分の中で納得できる形でした。かつ、そこにストックオプションなども付いてくるので、全体のパッケージとしては、自分自身も納得できるし、会社に対しても説明がつくものをつくれたと思っています。CFOでスタートアップに入社するなら、その程度の提案は必要だと思っています。私もよく他のスタートアップの創業者と話しますが、CFOなら自分の報酬パッケージを企業と交渉するだけではなく、会社のキャッシュフローを踏まえて、何が経営陣向けのインセンティブプランとしてベストなのか提案してほしいと、よく聞きますので、もし、検討している人がいれば、そのように組み立てるのがいいのではないでしょうか。

[4]現職の管掌と業務詳細について教えてください。

山田 スタートアップですので日々、やるべきことは変わりますが、現在、持っている領域では大きく3点に分けられます。1点目は調達業務や株主対応、IRです。スタートアップは戦略的なファイナンスが極めて重要で、基本的には事業上は赤字の状態で成長を続けていくモデルです。常に次の調達に向けて、株主がどのような期待値を持っているか、どのようなクライテリアやKPIをミートすれば調達につながるかを考えています。また、次々と新しい株主を迎えなければいけませんので、新しい株主の層に対してもマーケティング的なことが必要です。ここの株主コミュニケーションがかなり重要な業務です。

2点目は労務や法務、経理、人事などのコーポレート機能全般を丸々見て、守りのコーポレート機能を一通り見ます。3点目は事業上、FP&Aのように計画を作り、そこに対してリソースアロケーションしていくことも非常に重要な業務です。特にスタートアップの場合は既存のバランスシートに強いアセットがあるわけではありませんので、今より人の生産性の部分が圧倒的に重要な事業成長のドライバーになります。そこのリソースアロケーションが会社として成長したい方向性になされているかを常にウォッチしながら、例えば、このプロジェクトにより人を割こうなどと考えます。それらは細かくPDCAを回していく上で、しっかりとFP&A、予実を回していくことの重要性が高いので、そのようなロールも持ちながら進めています。この3点を見ながら仕事をしています。

キャリアINQ ファイナンスの部分で質問です。これまでファンドとMBAと商社とでさまざまな経験をしてきたと思いますが、そのようなファイナンス回りの業務にはどの経験が生きていると感じますか。

山田 やはりPEファンドでの1円の企業価値でもこだわって、どのように相手先とネゴシエーションするかという経験は生きています。あとはさまざま起こるシナリオを想定して、契約を細部まできちんと詰め切るという点でもPEファンドにいたときの経験が非常に生きています。

キャリアINQ 大変興味深い話でした。山岡さんにも同様の話を聞きます。まずは現職での管掌と業務詳細について教えてください。

山岡 山田さんの話と重複しますが、弊社のほうがよりレイターステージのため、役割が明確で、CFOの業務はそこまで幅広くはありません。1点目は資金調達です。銀行との間で借り入れを行っている分、新たな株主を募集する必要はありません。視点としては株主というよりはあくまで銀行のほうを向いて交渉を行っています。従って、当初、借り入れた金額を約定どおりに弁済していけるかどうかが重要で、借り入れのときに出した事業計画を遂行できているかどうかの説明を毎月、月次試算表を出すと同時に、定例で行っています。併せてKPIの指標等も提出しています。

2点目は、予算の策定です。会社として重大な仕事の一つで、特にファンドは会社を買う前からある程度、事業計画を決めて買っています。そうでなければペイしませんので、ファンドも独自の予算を持っています。それは会社側の人間からすると、全く知らない情報ですし、そのような予算は達成できるわけがないと思うところからスタートします。1年限りの予算に限らず、中長期の予算の策定も含めており、その交渉や調整が主な役割です。

3点目としては管理部門の強化です。KPIの設定も含めた、数字の見える化を行い、新しくファンドが入ったことで、今まで気付かなかったけれども、重要な指標がありますので、そういったことを拾い集めて、銀行や取締役会などで説明します。予算に対しての進捗度を経営陣に説明することも大きな仕事です。私が認識しているのはこの3点です。

キャリアINQ 先ほどの山田さんの話と比較すると、エクイティーファイナンスやベンチャーキャピタルからの調達はあまりない一方で、精度の高い予実管理や守りの部分が求められるイメージですか。

山岡 そのとおりです。よりレイターステージですので、予算に対してそれほどギャップが生じることはないというスタンスで、銀行側も資金を貸してくれますから、当初の計画した数字は達成して当たり前です。借りた側としては、それに対して結果を残し、差異があるならば、プラス方向もマイナス方向もしっかりと理由を付けて説明します。それが月次ベースで行っていることです。

そのような意味では取締役会での数字の検証がかなり細かい検証です。それこそ、100万円単位で検証します。販売費および一般管理費の一部の費目が100万円から200万円に増えると、社長からなぜ増えたかと聞かれたりします。それだけ、数字に対して意識が高いところが弊社の強みでもあります。

キャリアINQ 一方で、ファンドが策定した予算に対して、CFOは対象会社と板挟みになるようなケースもあるのかもしれないと思いますが、どうでしょうか。

山岡 それはあります。情報の非対称性があり、買う側は投資資金に見合う回収をしなければいけませんので、成長といっても中の社員からすればアグレッシブすぎる数字になっていることがあります。ファンドが入ることでより施策が強化されて、バリューアップするという基本的な考えの下で行っていますから、買う前の利益をさらに伸ばす予算になっています。

そこの落としどころが難しく、一対一で突き詰めて話し合い、妥協点を探る作業を行っています。

キャリアINQ 山岡さんはPEファンドの投資先以外での、事業会社での管理部門経験もありますが、そこと比較して、PEファンド傘下ならではの業務があれば教えてください。

山岡 ファンド独自ですと、先ほど話した予算もそうですが、中期計画の策定は必須です。ファンド側はイグジットまでの5年計画を策定した上で入ってきます。それに対して、会社側は、1年計画は策定していても5年計画は策定していないケースが多くあり、そこを埋める業務が発生します。また、ファンド側は資金用途の縛りがあり、保険や投資商品は基本的にNGで、費用対効果が明確なものに用途が絞られてきます。そのような意味でシステムの方針なども費用対効果が明確になっているシステムでなければ、投資にOKが出ないことがあります。より費用対効果の効果を見ていると感じます。

キャリアINQ 大変勉強になりました。ちなみに現在の会社に入って、初めて取り組んだ未経験の業務はありましたか。また、その業務は過去のどのような経験が生かされましたか。

山岡 未経験の業務が多いです。2社前の話ですが、初めて5年計画を作ったときは苦戦しました。PLだけならまだしもBSも作れと言われ、苦労もありました。そういった技術面は監査法人時代の経験を利用すると、それなりに何とかなりました。一方で、実務を通じてでなければ何ともできない部分は、人と人とのコミュニケーションや、先ほど山田さんが言っていたようなアカウンタビリティで、ステークホルダーへの説明責任です。そういった能力は実際に経験してみなければ上達しません。

銀行や株主はそれぞれ、利害がはっきりしていますから、それなりのノウハウがあります。銀行の立場であれば、どこをメインにするかは非常に大事な問題です。そういった銀行のメンツやプライドを大事にしながら、借りるときはそれを上手に比較し、うまく借りなければいけません。最初の金利が高ければリファイナンスも検討します。一時的にリファイナンスに成功したとしても、関係性は継続しますので、いっときの利益だけを追求すると、その後の関係がうまくいかなくなります。

そのような意味で、双方が納得できるように透明性を大事しながら、主張すべきことは主張し、こちらの要望をかなえていくという交渉を行います。そのような能力を監査法人で身に付けるのは難しいですから、こういった業務をこなしながら、一つ一つ、実務を通じてマスターしていくのではないでしょうか。

キャリアINQ 業務内容やスキルについて、理解が深まりました。続いて、メンタリティーについて聞かせてください。CFOは企業活動で重要な資金にまつわる仕事を統括するポジションです。特にPEファンド投資先ならではの苦労があれば教えてください。

山岡 ポジション的にはさまざまなプレッシャーというか、大変なことが多々あります。取締役会であれば、時には社長をはじめ、経営陣から、この数字は何だと説明を求められ、うまく答えられなかったり、後から調べて数字が違っていたりすると、責任を負わなければいけませんし、対銀行や対株主でも同様です。そのような意味では自分が思い描いていたとおりにいかないことはよくあります。そのときに、そういうこともあると思えるポジティブな気持ちというか、打たれ強さは大事だと思います。反省するところは反省し、同じ失敗をしないように次に生かし、企業価値を上げるために努力を惜しまず、ぶれない姿勢を見せ、失敗はつきものだと肝に銘じながら、前向きに仕事をしていくことが大事です。

[5]心労やプレッシャーを乗り越えるメンタリティーは過去のどのような場面で身に付けましたか。また、過去に体験した壁や試練があれば教えてください。

山岡 これはそれこそ子どものときからの経験でもありますので、どことは言えません。どの場面でも失敗は仕事をしていく上でつきものです。そういった意味では失敗した事柄のメモを取り、同じ失敗をしないようにしたり、それを生かして今後の施策につなげたり、失敗で終わらず次につなげ、改善するメンタリティーで仕事をしてきました。監査法人時代も事業会社でも失敗をしていますが、それぞれの職場で前向きな姿勢は失わないようにしてきました。

キャリアINQ 貴重なお話でした。今のお話ですと、苦労が多いという印象を受けます。逆にやりがいや充実感を得られるものは何ですか。

山岡 マイナスの面ばかり話してしまいましたが、なぜ、それに耐えられるかというと、それを上回るプラスがあるからです。そこの話が大事です。CFOというポジションは、企業価値を最大化するためにどうすればいいかを自分で考え、自分で答えを導き出すことができます。それを基に施策を実行して、それがうまくミートすると、会社の業績につながったり、会社が変わっていったりして、その場面を目の当たりにできます。そのような貴重なポジションであり、その瞬間は仕事をしてきてよかったと思えて、やりがいというか、心を支えている瞬間です。

キャリアINQ 山田さんにも同様に聞きます。ベンチャーCFOとしての苦労はありますか。

山田 今のところは順調ですが、とはいえスタートアップという不確実性の高い業界にいますので、2年後や3年後に会社が続いているかどうかは常に気に掛かっています。しかもただ生存し続けるだけではなく、常に成長していかなければいけません。毎日、案件が取れたか取れないかといった、様々な情報が入ってくるので、心理的にプレッシャーがかかる仕事だと思いますし、短期的にも結果を残しながら、しかし、さらに中長期に向けて仕込むことも必要で、ジェットコースターのような環境で仕事をしていると感じます。

あとは先ほど山岡さんが言ったように、見なければいけないステークホルダーの数が多いです。会社がもう少し成長し、組織がマチュアになると役割分担ができますが、スタートアップはまだまだ人の規模も少ないので、自分自身でハンドリングしておかなければならないステークホルダーの数も多岐にわたります。そういった意味でいろいろなところに気を張らなければなりません。つまるところ、不確実性や管掌領域の広さが大変な部分でもありますし、他方でそれ自体が大きなやりがいにもつながっていると思います。

キャリアINQ ちなみに、その心労やプレッシャーを乗り越えるメンタリティーは過去のどのような場面で身に付けましたか。

山田 メンタリティーというよりは、それほどの大きなチャレンジや、いい意味で期待値を自分自身にかけられていることが心地よいと思えるかどうかという部分だと思います。山岡さんの話に近いのかもしれませんが、個別の場面で身につけたというよりは昔から自然と身につけてきました。私自身、スポーツをしていたこともあり、そのようなところで得たものかもしれません。自分なりの壁にチャレンジする力や、チームで高い目標に挑むためには自分個人が不安だからといってぶれてはいけないので、不確実性や短期的なアップダウンは避けられないものの、しっかりリーダーシップを持って、自分自身が中長期にピンを刺しながら、チームを鼓舞しながら進めていくことなど、高校や大学時代部活で培った経験が生きているかもしれないとは思います。

[6]質疑応答

キャリアINQ それではここからは、質疑応答に移ります。スタートアップのKPI設定やバリューチェーン上のボトルネック特定のような業務はどのように実施していますか。

山田 KPI設定は非常に難しく、日々、見なければいけないところが変わり、事業も早いスピードで変化します。期初に設定したKPIが1年間や2年間はトラックされていくことは必ずしもなく、3カ月単位などで変わっていきます。常に組織と事業の状況をモニターしながら、今、この会社にとって成長するためのボトルネックがどこにあって、そのボトルネックを正しく理解するにはどのようなKPIを追っておくのがいいかを常にウォッチしている形です。

そのような意味では一つ一つの、お客さんの現場の情報なども連携して吸い上げながら、それを踏まえて経営陣で議論をして、今は何に一番フォーカスし、それにより、KPIはこれを見るべきといように、ある種、クオーター単位や、もっと言えば1カ月単位などでも議論しながら、常に見直しているのが現状です。ですので、バリューチェーン上のボトルネックも、これにかなり近いです。現場の声や、実際にプロダクトをサーブしているお客さまに、どのような課題が出ているかをヒアリングすることも含めて、ファーストハンドな情報を吸い上げながら、決まったプロダクトがあるというよりは、常に進化している状況ですので、そういうところに常にフィードバックをかけています。

現場の情報を大事にして、私も地方のスーパーマーケットに出張して現場を見に行くなど、いまだに結構な頻度でしています。そのような感覚がなければ、本当の意味で現場を把握するのは難しいのではないかという感覚があります。

キャリアINQ かなり現場とのコミュニケーションを大切にしながら、ボトルネックの特定もしているのですか。スタートアップではなく、レイターステージではありますが、山岡さんはどうですか。

山岡 KPIの設定は定点観測というか、毎月、同じKPIの指標を見ることで分かることもありつつ、弊社の場合は設立からある程度年数が経っているため、同じようなKPIをずっと使っています。逆に言うと、現在のKPIを見ているだけでは事業の弱い部分が見えてきません。そこに効果的な手が打てないから、うまくKPIが設定できていないところが、反対の意味合いとしてあります。私のように最近、入ったCFOとしては、弱点に効果的なKPIを設定できるかという視点から、トライ・アンド・エラーでいろいろな指標を毎月、出しています。トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、何が効果的で弱点を補強できるかという観点からKPIを作成し、トライしているのが現状です。

キャリアINQ 既存のものも生かしつつ、新しい視点から更新していく形ですか。2点目の質問は、取締役会での月次や決算の報告にあたって、注意している点や丁寧に説明している点などがありましたら教えてください。山岡さんからお願いします。

山岡 取締役会は、ファンド側の人間や会社側の実際に経営を行っている役員が出席している場ですので、現状の数字は昨年と比べて、どの程度、成長しているのか、予算と比べてどの程度のギャップがあるか、そのような視点を大事にしながら説明します。調子がいい部分はあまり説明しませんが、部門として弱い部門にフォーカスして、なぜ、今年は弱いのかを経営陣に伝わるように資料を作ることを心掛けています。

山田 まだ予実が精密性を求められるよりは、順調に成長しているかどうかや、中長期で成長していく道筋がしっかりとしているかが、外部の株主や役員からの期待ですので、細かい財務の報告というよりは、先行指標的な、これから契約が取れそうな部分や、仕込みをして良い予兆があることなどを中心に報告するようにしています。上場したスタートアップのIR資料などを見て、われわれが2、3年後に株式市場から評価されるときに、どのような指標を出しておけばいいかを意識しながら、いかに成長性を見せるかを考えています。

キャリアINQ かなり対照的ですね。山岡さんはより現実の部分で精度の高い予実管理で、山田さんはより将来を見据えて行っています。

山田 ちなみに、最近は市場環境が冷えてきていて、スタートアップも効率性や収益性が大事だという流れになってきています。当然、私もこの市況になる前からコスト管理はしていましたし、必ずしも説明はしていませんが株主向けの資料の下に毎月のコスト管理の状況を載せていました。最近は、自然とそういった資料がフューチャーされて、「御社はきちんとしていますね」とも言って頂けたりもします。ですので、するべきことは、外部からのアテンションが高くないフェーズでも継続することが大事だと思っています。

キャリアINQ 次の質問です。CFOとして採用された際に、自分自身のどの部分が相手方に評価されたと考えていますか。

山岡 私は前職で経験したことが評価されたと思います。ファンドがどのような考えで投資を行い、イグジットし、どのような方法で進めていくかまで目の当たりにして経験したことです。監査法人としてのバックボーンも、そこはそこで評価されたと思います。

山田 2点ほどあると思っています。1点は企業価値最大化のために打てる方法の、引き出しの広さのようなことが評価されたと思います。PEファンドにいた経験が大きく、このような採用をすれば、企業としてチャンスが増えたり、トップレイヤーの人材を入れたり、ストックオプションも大胆に使い、インセンティブを付けて採用競争力を付けたり、大胆な業務提携により事業を大胆に成長させるオプションなど、そのレベルのアプローチまで自分の引き出しに入っていたので、会社をどのように成長させるかという議論になったときに、既存のメンバーでは考えつかなかったような案や、非連続な打ち手をテーブルに乗せたことは明確に付加価値として評価してくれたと思います。

2点目はマインドセットで、私もジョインするからにはこの会社が大きくなってくれることが、他のどの事項よりも圧倒的な優先事項として、最重要と思いました。ですので、Day1から、この企業のことは「主語」で話していたと思います。特にCFOという会社の財布を任せる人間として、経営者である社長が信頼を置けるかどうかが重要で、CFOが私利私欲や自分の経験が先に来てしまうと安心して財布を任せられません。手前みそですが、そこも評価され、安心して背中を預けられると思ってもらえたのではないかと思います。

キャリアINQ この質問を最後にします。世界的なリセッションが始まる中で、資金調達などミッションの達成にどのような影響が出ていますか。

山田 これは明確にモードが変わったと感じています。先ほど話したように、何でもかんでもお金を使って成長すればいいという世界よりは、ある程度、効率性やコストコントロールを求め始めています。もともと行っていましたが、メリハリをつけ、いかに長く戦い続けるかを意識しています。その中でこの環境でも投資を受けられるスタートアップや会社はどのようなところかは常にウオッチしていて、今まで以上に平時での投資家とのコミュニケーションを増やしています。

株主がどのような期待値を持っていて、どのようなKPIをヒットしていれば、この環境下でも資金調達ができるスタートアップになれるかは意識しています。投資家は幾ら投資してどれほどの成長をするかを見ています。そこの成長への効率性をしっかりと指標として追いながら訴求していきます。あとは、現在は赤字ですが、ここまで行けば黒字になるというような、黒字に向けてのステップを、数値をもって語るように意識しているので、会社の見せ方が変わりました。

また、この環境下では勝ち負けがはっきりすると思います。本当にいい会社は投資が集まり、そうではない会社には集まらなくなるでしょう。いかに勝ち組に残るかという意味での会社の見せ方は非常に意識しています。

今後様々な先行指標が、インフレの影響など、ここから実体経済に跳ねてくると思います。今はマーケットだけの話ですので、事業環境が劇的に悪化したわけではありませんが、リセッションになってくると投資が抑制されるなど、事業自体への影響もあり得ると思っています。われわれとしてはマクロの二番底も含めて、どのようにこの中で生き残っていくかを意識しています。リーマンショックのときに生き残ったスタートアップはその後、成長しているというデータもありますので、今、いかに生き残るかはその後の成長という意味でも非常に重要です。逆に今、スタートアップに飛び込んでくると貴重な経験できるという面白さはあります。

キャリアINQ 山岡さんは新規の調達はそこまで多くはないと思いますが、イグジットに対してのミッションの達成に何か影響は出ていますか。

山岡 現在、借り入れを行っているので、TIBORの影響は受けます。近々、TIBORのレートも上がるでしょうから、会社にとっては金利の圧力がアゲインストであることは間違いないと思います。そうすると、投資のハードルレートが上がってくるので、より入り口が厳しく見られるでしょう。これまでは失敗したら撤退すればいいとなっていましたが、金利負担が増えるということは簡単にはチャレンジができなくなり、入り口で審査が厳しくなると思いますし、撤退の基準も、相当な利益を上げなければ撤退を迫られてしまうという厳しい状況に置かれるでしょう。

キャリアINQ 最後に参加の皆さま、現役のCFOの方やCFOを目指している方も多くいますので、皆さんにメッセージをお願いします。

山岡 私もCFOを目指し始めて、ようやくCFOの立場で仕事をするようになりました。目指さなければCFOになれないと思います。そして、目指したからといって必ずなれるわけではありません。その努力と並行して、運の要素も大事だと思います。ポジションに空きがなければCFOになれませんので、そのときはこちらのキャリアインキュベーションを利用しましょう。私はキャリアINQさんにCFOという職場を案内してもらい、感謝しています。そういった外部の力も借りながら目指してください。

CFOは企業価値の最大化がどのようにできるかという、着任した後が大事ですので、ここからが勝負だという思いでいます。皆さんもCFOを目指し、CFOの価値全体が底上げされ、社会に認知されるようになればいいと思っています。以上です。

山田 私もまだ偉そうに言える立場でもなく、実績もまだこれからです。CFOである前に経営者であるところが大きいと思います。ファイナンスに強みを持っていて、かつ、そこに対して相当な責任を持っています。しかし、山岡さんも言ったように、最後は企業価値最大化をリードしていく役員というポジションですので、あらためて、自分が企業価値最大化に貢献するためのスキルセットの磨き方や、もしかしたら、人脈などが活きる場合もあるかもしれません。さまざまな形で自分自身の経営者としての力を上げていく努力を繰り返すことが大事です。これは私自身の自戒の念も込めて、思っています。例えば、事業開発の経験やプロダクトの理解の深さなど、ファイナンス以外の分野の経験も一つのエッジになる可能性もありますので、食わず嫌いせずにいろいろな経験をして、自分自身の力を付けることが大切です。

CFOは非常に重要なポジションで、すぐに探せるポジションではありません。また、他の経営陣との相性も非常に重要ですので、キャリアインキュベーションはじめ、いろいろな接点を持ち、カジュアルな機会を含めて対話するなど、既存のCFOから話を聞いて、機会についてイメージを膨らませるような仕込みが大事だと考えています。最終的に貴重で運命的な機会に出会うと思いますので、まずは活動量を上げることが重要だと、私自身も感じています。

キャリアINQ 貴重なお話をありがとうございました。企業のフェーズは違いますが、2人ともプロ意識を非常に高く持ち、企業価値最大化に強くコミットしていると感じました。スタートアップは非連続な成長を目指しており、PEファンド投資先は計画にミートするような精緻な成長を果たすことを目指しています。そこの違いはありますが、マインド面は共通している部分が多いと思いました。

(了)