マーケットレポート(2022年4-6月) - キャリアインキュベーション | ハイクラス・エグゼクティブの転職・求人情報
       

マーケットレポート(2022年4-6月)

CxOレポート

CxOマーケットレポート(2022年4-6月)

 

日系大手企業、外資系大手企業、PEファンド投資先企業、ベンチャー・スタートアップ企業におけるCxO採用のマーケット状況を四半期ごとに振り返る『CxOマーケットレポート』。今回は2022年4月-6月期のマーケット状況をまとめています。また、今回から最新の動向を踏まえて注目テーマを取り上げるコラムも開始。初回は、政府が支援を強化するなど今注目が高まっている「スタートアップ企業への転職」を取り上げました。CxOとしてキャリアアップをご検討されている候補者の皆様はもちろん、採用担当の皆様も採用計画立案時のインプットに是非ご覧いただければ幸いです。
※弊社コンサルタントの実際の支援経験に基づいたレポートです。業界で言われる全体感とは内容が異なる場合があります。

 〇目次
  ・2022年4月-6月期の採用動向
   -日系大手企業
   -外資系大手企業
   -PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)
   -ベンチャー・スタートアップ企業
  ・【COLUMN】スタートアップ企業への転職を考える
  ・おわりに

【2022年4月-6月期の採用動向】

総評として、2022年4月-6月期は、いずれの業態においても前期からの堅調な採用意欲を維持しました。特に日系大手企業とベンチャー・スタートアップ企業は採用意欲が非常に高く、その一方で候補者が不足しており採用に苦戦している状況です。いずれの業態においても、前期に続きデジタル・IT関連のニーズが強いようです。すでに来期(7月-9月期)以降の採用ポジションのご相談も多数いただいており、引き続き採用意欲は維持されるものとみています。

以下、日系大手企業、外資系大手企業、PEファンド投資先企業、ベンチャー・スタートアップ企業について個別の動向をご説明します。

日系大手企業

採用意欲は旺盛でした。
B2Cビジネス企業を中心として、4月-6月期はコロナ収束の流れがあり、外部環境変化への対応や事業拡大のニーズが高まったことで、部門長クラスの採用のご相談を多数いただきました。例えば、コロナ禍に大きく伸長したeコマースと実店舗をよりシームレスにするオムニチャネル戦略の推進や、コロナ禍を経ての企業の統合といった大きな潮流があり、上流の戦略立案・実行を担うマーケティングや経営企画のご相談を多くいただきました。一方、旺盛な採用意欲に対して候補者の数は多いとは言えず、加えて特定の候補者にオファーが集中しがちなことから採用に苦戦している企業が多く、年収を引き上げてオファーを出すケースも多々ありました。7月以降も新規求人のご相談を多くいただいており、来四半期も今四半期と同水準の採用意欲が維持されるとみています。一方、候補者側に関して直近1~2年で転職したばかりの方から転職の相談をいただくことが増えてきています。外部環境の変化に後押しされたものと考えていますが、当面はどのように採用マーケットに影響するか動向を追っていく必要があると考えています。

外資系大手企業

採用意欲は堅調でした。
B2Cビジネス企業を中心として、リプレイスメントを主要因に、ファイナンス、デジタルマーケティングの部門長レベルのご相談を多くいただきました。これらの分野では候補者の数が十分とは言えず採用が難航しているため、スカウトによる採用が活発に行われたり、高い報酬を提示する企業も多々ありました。今期懸念されていた世界的な景気後退の影響は採用面ではまだ表出しておらず、日本を重点市場とみなしている企業では円安を追い風に日本市場への更なる投資を行っていてポジションを新設する動きもありました。来期も同程度の採用意欲が続くとみていますが、当面は動向を慎重に注視していく必要があると考えています。また、外資大手企業の採用計画では、引き続きジェンダーバランスが意識される傾向が強くあります。

PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)

採用意欲は堅調でした。
ラージキャップ、ミッド・スモールキャップ共に、経営者レベルと部門長レベルへの採用意欲が高く、ミドル・スモールキャップでは内部監査やIT関連のポジションのニーズが豊富でした。ラージキャップでもIT関連に高いニーズがあったものの、投資先企業に派遣するポジションというよりは自社のバリューアップチームでの採用が中心となりました。昨年採用が非常に活発であった反動もあり、候補者の数は多いとは言えませんが、ファンド側も様々なサーチファームに声を掛けていることから各ポジションでの採用倍率は高い印象です。また、直近数年で転職したばかりの候補者が外部環境の変化やカルチャーギャップ(コロナ禍中はオンライン面接が中心となったことからギャップがあった)などを理由として動き始めています。来期以降もPEファンド投資先企業での採用意欲は変わらないとみています。現在の金融市場は厳しい環境ですが、新しくファンドレイズが完了しているPEファンドでは手元資金を活用してデューデリジェンス中の案件が多数あり、今後採用ニーズとして顕在化されていくものとみています。

※主要PEファンドの投資については、弊社ホームページでご確認いただけます。
https://www.careerinq.com/private_equity/news/

ベンチャー・スタートアップ企業

採用意欲は旺盛でした。
企業体制強化や事業拡大を目的として、CFOや部門長レベルの相談を多くいただきました。高い採用意欲に対して人材の供給は不足しており、採用に苦戦している企業が多いです。資金調達環境が厳しくなり『スタートアップ冬の時代』と言われ始めていますが、現時点では採用面への影響は見られません。しかし今後影響が出てくる可能性はあります。IPOの想定スケジュールを遅らせた企業が採用計画を後ろ倒したり、より時間を掛けて採用を行っていくという動きがあります。また、ベンチャーキャピタル(VC)が投資判断を厳しくした結果、以前であれば資金調達ができた企業が苦戦することもあり得ます。しかし、VCの投資意欲そのものは高いため、事業優位性や成長性に優れた企業へは引き続き資金が集まっており、この環境下で資金調達をできる期待の高い企業を探しやすくなるチャンスであるとも言えます。

【COLUMN】スタートアップ企業への転職を考える

継続して高い採用意欲を維持しているスタートアップ。最近はメディアなどで注目される機会も多く、政府も支援を強化していることなどから、以前と比べて候補者の方からスタートアップ転職のご相談をいただく機会も増えました。しかし、よくよくお話を聞いていると関心はあるが「スタートアップを希望している」というよりは「スタートアップも選択肢の一つに入れている」という方が多く、マチュアな企業やコンサルなどからオファーが出たら最終的にそちらを選ばれてしまうことが多いのが現状です。スタートアップが候補になりにくい要因の一つに、CxOの候補者の世代の方々にとって一昔前のベンチャーのイメージが強いことがあるのではないでしょうか。一昔前のベンチャーといえば、社長のワンマン、独特な企業文化、非常に低い報酬、ハードワーク、つぶしがきかないといったイメージがありました。しかしここ数年でスタートアップの性質は大きく変わっています。本コラムでは最新のスタートアップについて、意外な一面を中心にご紹介します。スタートアップに対する古いイメージを払拭することで、これまで関心を持っていなかった方、関心はあるが高くはないという方が目を向けるきっかけになると幸いです。

  • ・ビジネスエリートの経営者が増えている

最近はプロフェッショナルファーム、商社、メガベンチャー等で経験を積んだビジネスエリートが起業したスタートアップが多くなりました。また優秀なベンチャーマインドのある若者は周囲に起業している人が多く、起業に対する心理的なハードルも低くなっています。日本でもVCが増え、ファンドサイズも大きくなり、数年前と比べると資金調達環境が良くなっていることも起業を後押ししています。Exitとしてハードルの高いIPOではなく事業売却を短期間で狙うという、必ずしも社会を変えるようなユニコーンベンチャーを作ろうとはしていない起業家も出てきています。そうしたいわゆるビジネスエリート層が経営していることから、昔ながらの行き過ぎたベンチャーカルチャーではない、バランス感覚を持った社風の企業も多くなっています。

  • ・給与水準は上昇傾向にある

ここ数年でスタートアップの給与水準が明らかに高くなりました。客観的なデータとして日本経済新聞が2021年12月に発表した「NEXTユニコーン調査」ではスタートアップの2021年度の平均年収見込みは前年比5%増の630万円となり、上場企業に匹敵するレベルになったそうです。もちろん、即戦力採用が中心で、役職者の占める割合が高いスタートアップと上場企業とを単純に比較することはできませんが、弊社の実感としても例えばCFOはここ2~3年で2~3割位は高くなった感覚があります 。VCからの資金流入も大きくなっていますし、優秀な人材を採用するために高い給与を設定すべきという意識を持った経営者も増えています。

  • ・労働環境が整備された企業が多い

ここ数年新規上場審査でコンプライアンスが厳格化しており、特に人事労務関連は厳しく見られます。働き方改革の推進として2019年4月に施行された改正後の労働基準法では、時間外労働の上限規制や有休取得義務化などが導入されました。法規制への遵守は上場審査において厳しく審査される対象であり、したがって、新規上場を目指す企業では最新の労働基準法に準拠した制度を整備しています。これから厳しい上場審査を迎えるスタートアップでは、高いコンプライアンス意識が担保されているのです。

  • ・キャリアとして転職で評価される経験、ポジションも多い

特に大手企業に所属されている方から、「一度スタートアップに行ってしまうと、今後大手に戻れないのではないか」というご懸念を相談いただくことが多いです。確かに年齢・経験次第では、大手企業に戻りにくい方がいらっしゃいます。しかし、事業ライフサイクルが短期化する昨今では、大手企業でも新規事業立ち上げやM&Aは積極的に行われていますし、専門性を重視するジョブ型雇用も浸透し始めています。そうした背景から、スタートアップで新規事業立ち上げ、M&A、CFOなど大手企業でも活かせる専門性を磨いた方が大手企業に行かれるケースも多々あり、以前よりも垣根が下がっています。また魅力的なスタートアップも多数あるので、もし入社したスタートアップが合わなくても他のスタートアップに行くことは難しいことではありませんし、最近ではコンサルティングファームでもスタートアップを経て出戻りするケースも増えています。スタートアップという環境を活かして、積極的に良い経験を積むことができれば、必ずしもリスクばかりではなく、今後のキャリアが広がる可能性も秘めているのです。

優れたスタートアップを探すためのヒント

スタートアップの意外な一面、いかがでしたか? 上記では主に『働く場』としてのメリット面を中心にご説明しました。しかし、スタートアップ転職では当然、会社・事業の将来性を見定めることも重要です。将来性を測定する有効な指標として売上成長率がありますが、創業間もないアーリーステージの場合はその指標は適切に機能しません。そうした時に一つのヒントになるのが、出資元のベンチャーキャピタル(VC)を確認することです。VCは将来性を見定めるプロフェッショナルで、業界や事業を分析し、経営陣との面談を経て投資意思決定を行っています。豊富な実績があり、投資先選定に定評のあるVCが複数社投資していればそのスタートアップはある程度将来への期待値が高いと言えます。もちろん一概には言えませんが、投資家の顔ぶれがあまり聞いたことがない投資家ばかりであれば、実績あるVCから断られているというケースが考えられるのです。


【おわりに】

2022年4月-6月期のマーケット状況を受けて、弊社代表取締役社長の荒井裕之は次の通りコメントしています。
「前四半期からの経済の先行き不透明感が継続した中でも、CxO採用では高い採用意欲が維持され、来期以降の相談も多数いただいています。しかしIMFが世界経済見通し(WEO)において日本のGDP成長率見通しを年初来下方修正し続けており、また回復の兆しが見えたコロナ禍も7月以降再び厳しい状況に転じています。先行き不透明感が長期化する中で、今後企業が採用方針を転換する可能性は否定できません。ご自身の現状やキャリア志向、マーケット動向を総合的に見た慎重な判断が必要となりますため、我々のようなプロのエージェントをぜひご活用ください。」
現在、CxO採用では希望する候補者像にフィットする人材が見つからず、素晴らしいポジションであるにも関わらず採用が難航している企業が多くなっています。特に、デジタルやサステナビリティなどの新しい分野でありつつも、企業の喫緊の課題でもある分野では、経験者がマーケットに少ないため、採用が難航しています。弊社にはCxOポジションへの転職にご関心をお持ちの方に、求人の紹介だけではなく、直近動向などの情報も提供しています。今すぐの転職を考えていなくとも、ご関心がございましたら、是非一度ご相談をいただけますと幸いです。