マーケットレポート(2022年7-9月) - キャリアインキュベーション | ハイクラス・エグゼクティブの転職・求人情報
       

マーケットレポート(2022年7-9月)

CxOレポート

CxOマーケットレポート(2022年7-9月)

 

大手事業会社(日系/外資系)、PEファンド投資先企業、ベンチャー・スタートアップ企業におけるCxO採用のマーケット状況を四半期ごとに振り返る『CxOマーケットレポート』。今回は2022年7月-9月期のマーケット状況をまとめています。最新の動向を踏まえて注目テーマを取り上げるコラムでは、「ファンド投資先CxO採用はどのように行われるか?」を取り上げました。

CxOとしてキャリアアップをご検討されている候補者の皆様はもちろん、採用担当の皆様も採用計画立案時のインプットに是非ご覧いただければ幸いです。

※弊社コンサルタントの実際の支援経験に基づいたレポートです。業界で言われる全体感とは内容が異なる場合があります。

 〇目次
  ・2022年7月-9月期の採用動向
   -大手事業会社(日系/外資系)
   -PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)
   -ベンチャー・スタートアップ企業
  ・【COLUMN】ファンド投資先CxOの採用はどのように行われるか?
  ・おわりに

【2022年7月-9月期の採用動向】

総評として2022年7月-9月期は、いずれの業態においても前期からの傾向を継続し、堅調を維持しました。

以下、大手事業会社(日系/外資系)、PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)、ベンチャー・スタートアップ企業について動向をご説明します。

大手事業会社(日系/外資系)

採用意欲は前期から引き続き、堅調を維持しています。世界的な景気後退の影響も採用面では表出せず、円安を追い風とした外資系による日本市場への投資傾向も続いています。

ポジションとしてはDX関連とマーケティング関連の求人のご相談を多くいただきました。

DXは採用マーケットに人材が限られている一方で、多くの企業が採用しているために競争が厳しい状況が続いています。異業種出身者の採用も活発で、これまでの新規採用とは異なるノウハウが必要かつ長期的に重要であることから専門のリクルーターを雇用する動きも見られました。

マーケティング関連は特に外資系で多く見られ、その背景に成長を求めてドラスティックにリプレイスメントを行った企業が多い印象です。一方でやや採用ニーズが鈍化したのが管理部門で、昨年採用が活発に行われたことが背景とみられます。マーケットでの候補者数は横ばいであり、オファーを出しても他社とのバッティング、現職からのカウンターオファーを背景に辞退する候補者も多く、各社採用に苦戦しています。

給与水準はやや上昇傾向にあり、来期も求人の相談を同様の堅調な採用意欲が続くとみています。

PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)

採用意欲は前期から引き続き、堅調を維持しています。新規投資、リプレイスメント、事業拡大などの背景からラージキャップでは部門長レベル、ミッド・スモールキャップでは経営者レベルを中心に求人が多くみられました。

ラージキャップ、ミッド・スモールキャップともにCFOの採用意欲が高く、ミッド・スモールキャップでは経営企画ポジションのニーズが高い傾向がありました。人材の供給は増えておらず、引き続き売り手優位です。特に経営企画ポジションの採用では、経営企画系バックグラウンドを有する人材の給与水準が上昇傾向(特にコンサルティングファームで給与水準が上昇傾向)であったり、キャリアの選択肢が増えていることを背景に採用に苦戦している印象があります。ラージキャップでは、投資先CxO採用の他にも自社でのバリューアップチームでの採用を活性化させています。

給与水準は引き続き上昇傾向です。能力のある候補者にとって売り手市場であること、当該ポジションにふさわしいハイレベル人材の現職給与が上昇傾向にあることに加えて、ミッドキャップでも案件の大型化が進んでいることなどがあげられます。豊富な手元資金があるファンドにとって、コロナ禍以前と比較し企業へ適正価格で投資できる環境では投資意欲が継続され、引き続きデューデリジェンスを多数行っており、今後新規ポジションとして顕在化される見込みです。特にミッド・スモールキャップで事業承継案件が増加しており、経営者ポジションが増加するとみられます。

※主要PEファンドの投資については、弊社ホームページでご確認いただけます。
https://www.careerinq.com/private_equity/news/

ベンチャー・スタートアップ企業

採用意欲は前期から引き続き、高い水準を維持しました。事業拡大への対応などを背景に、CFO、部門長クラスで比較的高い需要がみられました。

VC等投資家の投資意欲は引き続き堅調であるものの、継続する金融市場の先行き不透明感から投資先を厳しく選別する傾向が一層強くなった印象です。その傾向が長期化する中で、徐々に資金に余裕のない企業も増加しつつあります。そうした企業では採用を控えていますが、VC等投資家からの支援を受けられている資金調達が順調な企業では依然採用意欲は高いです。

前期同様人材の供給状況は求人に対して不足している一方で、資金や業績面が厳しいスタートアップに在籍している方が、他のスタートアップに転職するという動きも見られています。来期も堅調な採用意欲を維持すると見ています。

【COLUMN】ファンド投資先CxOの採用はどのように行われるか?

昨年非常に旺盛な採用意欲があった傾向からやや一服した感のある、ファンド投資先CxOポジション。現在の金融市場の動向は投資先CxO採用には影響しておらず、むしろプラスに働いているようです。ファンド投資先CxO採用は今後どのように推移していくのか。本コラムでは、今後を読む視点を提供することを目的としてPEファンド投資先CxOの採用の裏側を今一度整理しました。

  • ■ファンド投資先CxOの採用タイミングは?

まず、どのような背景からファンドが投資先CxOの採用を行っているのでしょうか。タイミングとしては大きく3つに分類できます。

  • 1. 新規投資の前後

新規投資判断をする上で「優秀なCxOを採用できるか」が判断に影響することも多い程、新規投資時のCxO採用は重要です。投資前だけではなく、100日プラン完了後に運営方針の変更があった場合など、必要に応じて最適な人材を集めながら経営体制を構築しています。

  • 2. リプレイスメント

十分な成果を得られない場合はリプレイスメントも行います。CxO採用はファンドが面接をして行っていることもあり、短期間ですぐに交代するということはほとんどありません。しかし、ファンドが直接育成・指導をして、それでもなお成果を得られない場合には1~2年位の比較的短期で交代することもあります。特に、カルチャー、既存人材のスキルなどの内部事情情報を事前のタイミングでは詳細に得られないオークション案件などでは、投資後にファンドにとっても想定外の事態が発覚し、方針変更を余儀なくされ、CxO人材に求められるスキルセットが変わることもあるようです。

  • 3. 事業拡大による追加採用

ファンドが入って徐々に企業規模が拡大したり、会社のステージが変わる中で、ポジションを新設し、採用するケースも多々あります。

なお、PEファンドではファンド設立年を『ヴィンテージ』と呼びますが、現在新規投資を行っているのは主に2019年~2020年頃のヴィンテージのファンドです。

このヴィンテージのファンドが資金調達を行ったのはコロナ以前から続く所謂金余りと呼ばれる市場環境下であり、その豊富な資金を元手として、コロナ禍以前と比較し、企業へ適正価格で投資できるということが現在の新規投資が多い背景にあります。

  • ■給与はどのように決まる?

では、投資先CxOの給与はどのように決定されるのでしょうか。1つの大きな基準は投資先会社のもともとの給与水準です。投資先の経営者や役員が続投する場合はハレーションを起こさないよう、同程度の水準を維持します。一方で役員が全員刷新される場合には上場企業役員の水準を大きく超える額になることも中にはあるようです。

なお、途中でExitプランが変わることもありますが、そのプランの変更はCxOの標準給与には大きく影響することはありません。

一方で給与水準は上げることは難しいが、それでは採用が厳しいという場合に、ファンドが株主権限を行使してストックオプションやExitボーナスを付与することもあります。特にストックオプションは業績と連動するので自身の働きによって伸ばすことができますし、Exitボーナス以上に税率面でもメリットが高い提案です。

  • ■求められるスキルは?

経営手腕はもちろんのこと、“外様”として企業に入社するために既存社員やチームとうまくやっていけるか、という『人間力』が大切です。ミッド・スモールキャップを中心に比較的若い方の柔軟性、伸びしろを評価し、CxOとして採用することも増えてきました。

私たちがこれまで様々な方をご紹介し、その活躍を拝見している中で言えることは「チャレンジするなら早めに」ということです。

CxOへの転身を目指す方には、これまでの人生で大きな失敗をせずに仕事面も順調であったことから、「まだ未熟な今チャレンジして失敗してしまったら、今後のキャリアが閉ざされてしまうのではないか」と失敗するリスクを考えてしまう方も多くいらっしゃいます。

しかし、ファンドもそこはニュートラルなスタンスで、原因についてご自身で分析していて、改善が可能ということであれば構わないと考えているファンドが多いです。実際、失敗を糧にして大きくストレッチし、「あの時失敗してよかった」とおっしゃっている現職の投資先CxOの方も数多くいらっしゃいます。

【おわりに】

2022年7月-9月期のマーケット状況を受けて、弊社代表取締役社長の荒井裕之は次の通りコメントしています。

「引き続き採用意欲に変動はみられませんでした。スタートアップでは資金調達環境を背景として企業によっては減退している状況ではありますが、ファンドは既に調達済みの資金を活用しているので新規投資に前向きですし、事業会社も特に外資で積極姿勢を崩しません。お話を伺っていても過去(主にリーマンショック時)に採用を絞ったことで景気回復後の波を逃してしまった、その反省から即座に採用を絞ることは必ずしもないようです。当面は企業の意欲としては安定傾向が続くと見ていますが、内訳の環境としては随時変化しているのでご自身のキャリア展望と照らしあわせながら市況を継続してご確認ください。」

現在、CxO採用では希望する候補者像にフィットする人材が見つからず、素晴らしいポジションであるにも関わらず採用が難航している企業が多くなっています。特に、デジタルやサステナビリティなどの新しい分野でありつつも、企業の喫緊の課題でもある分野では、経験者がマーケットに少ないため、採用が難航しています。弊社にはCxOポジションへの転職にご関心をお持ちの方に、求人の紹介だけではなく、直近動向などの情報も提供しています。今すぐの転職を考えていなくとも、ご関心がございましたら、是非一度ご相談をいただけますと幸いです。