マーケットレポート(2022年10-12月)
CxOレポート
CxOマーケットレポート(2022年10-12月)
大手事業会社(日系/外資系)、PEファンド投資先企業、ベンチャー・スタートアップ企業におけるCxO採用のマーケット状況を四半期ごとに振り返る『CxOマーケットレポート』。今回は2022年10月-12月期のマーケット状況をまとめています。最新の動向を踏まえて注目テーマを取り上げるコラムでは、「サステナビリティ・ESG人材の採用」を取り上げました。
CxOとしてキャリアアップをご検討されている候補者の皆様はもちろん、採用担当の皆様も採用計画立案時のインプットに是非ご覧いただければ幸いです。
※弊社コンサルタントの実際の支援経験に基づいたレポートです。業界で言われる全体感とは内容が異なる場合があります。 〇目次
・2022年10月-12月期の採用動向
-大手事業会社(日系/外資系)
-PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)
-ベンチャー・スタートアップ企業
・【COLUMN】サステナビリティ・ESG人材の採用
・おわりに
【2022年10月-12月期の採用動向】
総評として2022年10月-12月期は、大手事業会社でやや採用意欲に減退傾向があったものの、概ね前期からの堅調を維持しました。
以下、大手事業会社(日系/外資系)、PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)、ベンチャー・スタートアップ企業について動向をご説明します。
・大手事業会社(日系/外資系)
採用意欲は、日系・外資ともに前期と比較してやや減退傾向にありました。
決算、ビジネス上の繁忙といった時期的要因が主たる要因でしたが、2022年末から人員削減の報道が続くテック系の他、エンターテインメント、ファッションなど一部の業種で減退がみられました。
一方、インバウンド需要の回復が見込まれる外食・観光など採用意欲が高まった業種もありました。職種別では、営業、経営企画、ESG・サステナビリティなどビジネスサイドの求人が多く、管理部門系は昨年上半期から採用を活発に行っていたために現在は一服している感がありました。
人材供給は求人に対して不足、候補者の希望年収が上昇したことから採用に苦戦した企業も多いようです。来期以降の見通しは、現在求人の相談件数は当該期と比べて回復傾向にありますが、米国の景気後退への懸念が報道されていることもあり楽観はできません。
特に外資グローバル企業は、日本市場が好調でも、グローバル全体の業績を鑑みて日本での採用を凍結させることもあるため、引き続き動向を注視する必要があります。日系企業では2024年度の予算の見通しの立つ2月以降に動きが出るとみています。
・PEファンド投資先企業(ラージキャップ/ミッド・スモールキャップ)
採用意欲は、前期に引き続き堅調を維持しました。
ミッド・スモールキャップでは、経営者レベルと部門長レベル、ラージキャップでは経営企画部門での求人が多数ありました。人材の供給は引き続き不足しており売手優位、給与水準も上昇傾向にあります。現在積極採用中で、給与水準が高いコンサルティングファームと競合することが多いようです。
職種別では、特にマーケティングの採用に苦戦している印象です。マーケティングは手法が年々複雑化・多様化しており、CxOクラスではオフライン・オンラインともにマネージでき、全体戦略を描ける人材が求められますが、そうした人材の市場価値は高く、彼らの給与水準に合う額の提示が厳しいケースも多いようです。
また、ここ数か月の傾向として、Exit戦略としてIPOを目指す投資案件の増加と、それに伴う社外取締役の求人の増加があります。常勤のCxOと比較すると候補者数は格段に多いものの、上場後を見据えた採用であるため、採用に時間を掛けて、セレクティブに行うファンドが多いようです。
ファンドの投資意欲は引き続き高く、今期はベイン・キャピタルが大阪支社の開設を発表するなど依然としてファンド業界は活況にあります。来期も、引き続き高い採用意欲が維持されるものとみています。
※主要PEファンドの投資については、弊社ホームページでご確認いただけます。
https://www.careerinq.com/private_equity/news/
・ベンチャー・スタートアップ企業
採用意欲は、前期から引き続き高い水準を維持しました。
事業拡大への対応、内部体制強化などを背景にCFO、事業部門、管理部門で相談を多数いただきました。金融市場の不透明感が続き、ベンチャーキャピタルによる投資先企業の選定基準の厳格化が続いています。
その中で海外の投資家からの資金調達のニーズが高まっており、CFOポジションでは英語力が一層求められるようになっているようです。入社段階では投資家とのネットワークを持たなくても、交渉力や海外投資家についての理解のある人材であれば入社後にネットワークを拡大すればよいと考える企業が多いようです。
ベンチャー・スタートアップ企業では一昨年頃から積極的な採用を継続しているために、転職市場での候補者不足が一層進んでおり、それに伴ってオファー給与水準も上昇しています。来期以降も求人のご相談を多くいただいており、引き続き旺盛な採用意欲を維持するとみています。
【COLUMN】サステナビリティ・ESG人材の採用
本レポートでも過去に何度か言及しましたが、2022年は大手事業会社においてサステナビリティ・ESG(以下、便宜上ESGと表記)の採用が活発に行われました。社会全体でESGへの関心が高まり、一般消費者から投資家まで、企業のESGへの対応をシビアに見るようになり、今やESGは重要な経営アジェンダとなりました。興味がある候補者の方からのお問い合わせをいただくことも多くなっています。
本コラムでは比較的新しい分野であるESG採用の現状をまとめました。
- ■広報・IR系と事業・経営企画系のポジションがあり、中途採用は事業・経営企画系の募集が多数。
ESGポジションの役割は、大きく①広報・IR系 ②事業・経営企画系に分類できます。
- ①広報・IR系
ESG活動を対外的に発信する役割を担う、広報・IR。広報担当は各メディアを通じて一般消費者に対して自社のESG活動について認知拡大・理解促進を担います。投資家を対象とするIR担当は、2021年のコーポレートガバナンスコードの改定によってESG情報開示の一層の深化が求められるようになりました。投資家からシビアな質問を受けることも多くなったようです。
- ②事業・経営企画系
具体的なESGアクションを検討するのが、事業・経営企画系のポジションです。自社のビジネスモデルやサプライチェーンを俯瞰して、製造や調達の過程において、環境・労働・人権に対してエシカルにアプローチしているか、課題がある場合にどのような取り組みを行うべきか、対処する役割を担います。特にサプライチェーンが複雑でステークホルダーの多い製造業や小売業では高難度な対応が求められます。
中途採用で求人が多いのは②事業・経営企画系です。現在のところ、広報・IR系は専任担当者を置かずに既存担当者が対応したり、内部異動でまかなうケースが多いようです。
- ■現在ESG人材採用が活発なのは日系。外資系でも今後増えていく可能性が高い。
ESG人材採用は、現在は日系企業で募集が活発という印象があります。日本の本社=グローバル本社であることが大きいとみられます。もちろん外資系も日本法人内に担当者を置くケースも多くあり、今後一層高度な対応が求められるにつれ外資系でも徐々に増えていくのではないかとみています。
- ■新しい分野のため、リーダークラスでも未経験採用は多い。採用されるポイントは「高いビジネススキル」と「プロジェクトマネジメント力」。
ESGは比較的新しい分野で、リーダー企業やオピニオンリーダーも確立されていません。当然経験者の数も限られているので、ミドルマネジメント以上のポジションでも未経験者が採用されることも多いようです。
未経験で採用されるための要件は「高いビジネススキル」と「プロジェクトマネジメント力」でしょう。これまで弊社経由で採用された方の主なバックグラウンドは以下です。
- ●事業会社のマーケティング・経営企画
- ●広告代理店
- ●総合商社
- ●コンサルティングファーム(含・ESGコンサルティング)
- ●「環境」「労働」「調達」の特定の専門性を持つ事業会社出身者
プロジェクトベースの職種やクライアントワークの職種が中心となっています。
業務の多くはプロジェクトベースですし、新しい分野のためまだ組織が成熟しておらず、業務プロセスが洗練されている訳ではない中でマネジメントをする必要があります。
また、サプライチェーン全体を俯瞰するためにステークホルダーとのコミュニケーションも求められます。そうした環境下ゆえ、高いビジネススキルとプロジェクトマネジメント力がなければ業務を遂行することは困難でしょう。
要件はハイレベルですが、要件を満たしている人であれば、新しい分野であり、先駆者になることができる大きなチャンスです。是非一度考えてみるのはいかがでしょうか。
【おわりに】
2022年10月-12月期のマーケット状況を受けて、弊社代表取締役社長の荒井裕之は次の通りコメントしています。
「いずれの業態においても、求人に対して要件を満たす候補者が不足している傾向が続いています。採用意欲に大きな減退はありませんでしたが、今期もテック系や欧米系の金融機関での人員削減のニュースが続いています。米国では景気が後退するとの見方が多数を占めており、グローバルな経済連鎖の中で日本への影響も注視し、ご自身のキャリア展望と照らしあわせながら継続してご確認ください。」
現在、CxO採用では希望する候補者像にフィットする人材が見つからず、素晴らしいポジションであるにも関わらず採用が難航している企業が多くなっています。特に、デジタルやサステナビリティなどの新しい分野でありつつも、企業の喫緊の課題でもある分野では、経験者がマーケットに少ないため、採用が難航しています。弊社にはCxOポジションへの転職にご関心をお持ちの方に、求人の紹介だけではなく、直近動向などの情報も提供しています。今すぐの転職を考えていなくとも、ご関心がございましたら、是非一度ご相談をいただけますと幸いです。